法人を設立する際には、どの法人形態を選ぶかによって事業の進め方や責任範囲、税制上の扱いが大きく変わります。
それぞれの法人には特徴やメリット・デメリットがあり、目的や規模に応じて最適な形を選ぶことが重要です。
本記事では、日本でよく利用される法人の種類と、それぞれの特徴について解説します。
株式会社は最も広く利用されている法人形態であり、多くの企業が採用しています。
株式会社は、日本において最も一般的な法人形態です。
出資者である株主が出資し、経営は株主総会で選任された取締役が担います。
株主の責任は出資額の範囲に限定されるため、個人の財産にまで責任が及ぶことはありません。
社会的信用力が高く、取引先や金融機関からの信頼を得やすい点が特徴です。
また、株式を発行して資金調達が可能であり、事業の拡大にも適しています。
ただし、設立時の手続きや費用が比較的高く、運営上も株主総会や取締役会の開催など、一定の形式が求められる点はデメリットといえます。
合同会社は、比較的小規模な事業やスタートアップ企業に選ばれることが多い法人形態です。
合同会社は、2006年の会社法改正で導入された比較的新しい法人形態です。
出資者は「社員」と呼ばれ、出資額の範囲で責任を負います。
社員(=出資者)自らが経営に関わることができるため、所有と経営が一致しやすいのが特徴です。
設立費用が株式会社よりも安く、運営に関するルールも柔軟に決められるため、小規模事業やスタートアップに人気があります。
一方で、株式会社に比べると社会的な認知度や信用力がやや低く、取引や融資の場面で不利になることもあります。
しかし近年はIT系やクリエイティブ系の企業を中心に、合同会社を選ぶ事例も増えています。
一般社団法人は、営利を目的としない活動に幅広く活用される法人形態です。
一般社団法人は、営利を目的とせず、共通の目的のために活動する団体に適した法人形態です。
設立には2名以上の社員が必要ですが、資本金は不要です。
利益を社員に分配できない点が、株式会社や合同会社との大きな違いです。
公益性の高い活動や非営利事業を行う場合に利用されることが多く、NPO法人よりも設立が容易です。
ただし、収益事業を行うことも可能で、その場合は法人税の対象になります。
社会的信用を得やすく、行政や自治体との協働事業にも適しています。
一般財団法人は、財産を基盤として運営される非営利型の法人です。
一般財団法人は、特定の目的のために拠出された財産を基盤として運営される法人です。
設立には300万円以上の財産の拠出が必要で、評議員会や理事会などの機関設計も求められます。
公益性の高い活動や文化・教育・研究支援などを行う団体に適しています。
財産を基盤にするため、安定的な活動が可能ですが、設立要件が厳しく、維持にも一定のコストがかかります。
また、公益財団法人として認定を受ければ、寄付金控除の対象となるなど、税制上の優遇も受けられます。
NPO法人は、社会貢献や地域活動などの非営利活動を目的とする団体に選ばれる法人形態です。
NPO法人は、特定非営利活動促進法に基づき設立される法人です。
社会貢献を目的としており、利益を構成員に分配することはできません。
設立には10名以上の社員が必要で、定款認証や所轄庁への申請など、手続きはやや複雑です。
社会的な課題解決や地域活動などに広く活用されており、行政や自治体からの補助金や委託事業を受けるケースも多くあります。
ただし、活動資金の調達は難しいことが多く、寄付や助成金に依存する傾向があります。
一定の条件を満たして認定NPO法人となれば、寄付者が税制優遇を受けられるため、資金調達面で有利になります。
その他には、特定の分野で活動するために設立される法人として医療法人や宗教法人があります。
医療法人は病院や診療所を安定的に運営するための法人で、利益配分はできませんが社会的信頼や税制優遇を持ち、設立には行政の認可が必要です。
宗教法人は宗教活動を行う団体が設立し、公益性が高く税制上の優遇を受けられますが、営利事業には課税されます。
いずれも特定分野で安定した活動を行うための法人形態です。
法人には、株式会社や合同会社といった営利法人から、一般社団法人やNPO法人などの非営利法人まで、さまざまな種類があります。
それぞれ設立要件や目的、税制上の取り扱いが異なるため、事業の内容や目的に応じて適切な法人形態を選ぶことが大切です。
それぞれの法人形態の特徴についてさらに詳しく知りたい場合は、専門家である税理士に相談することをおすすめします。